デジタル時代において、企業の意思決定プロセスは大きな転換期を迎えています。Findy様主催イベント「「意思決定プロセス」が開発スピードを左右する!失敗しない“選択と検証”の実践的なノウハウ」にて、株式会社UPSIDERのCARD事業 開発責任者の早坂が、「"AI駆動時代"の新規事業の作り方」と題して、実際のプロダクト開発現場で、仕様検討・優先順位付け・議論整理などの意思決定プロセスにAIをどのように組み込んでいるのかを紹介しました。本記事ではその登壇内容の一部をご紹介します。
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UPSIDERについて
UPSIDERでは「挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る」というミッションを掲げ、法人カードを中心にサービスを展開しています。単なる機能提供ではなく、リスクを引き受けてまで成果を届ける。その覚悟と実行力が、私たちのチームの特徴です。
UPSIDERのプロダクトは、資金面で立場の弱いスタートアップや中小企業を中心に支援することを目的としています。機能を提供するだけでなく、リスクを取って成果を届けることこそが、自分たちの存在意義であるという考え方が根本にあります。 また、「世界的な金融プラットフォームを創る」というミッションには、金融機関や行政など多様なステークホルダーとの連携を前提とした“共創”の思想があります。市場の奪い合いではなく、新たな市場を創造することにフォーカスしているのが、UPSIDERのプロダクト戦略です。
UPSIDERカード、支払い.com、UPSIDER Coworker、UPSIDER BLUE DREAM Fundなど、いずれも市場形成や拡大を前提としたチャレンジングな事業展開がなされています。
意思決定とは何か?──「味玉をつけるか」を5秒で決められる状態にする
今回のテーマは「意思決定」です。朝一番の意思決定って、皆さん何をしていますか?僕は「二度寝をするかどうか」です。二度寝してしまうと会議に遅れるかもしれないから、やめておこう。そんな小さなことも意思決定の一つです。
最近は健康診断に引っかかって、油の摂りすぎを注意されたので、ラーメンは週に1回にしようと決めました。これも意思決定の一つです。
つまり、意思決定とは大げさなものではなく、日々私たちが無数に行っている選択のこと。だからこそ、「ルールと前提」によってその質を変えることができると考えています。
ファミレスのように選択肢が多すぎると決めるのに時間がかかる。一方、ラーメン屋では「味玉をつけるかどうか」だけ。選択肢を極力シンプルにして、即決できる状態にする——そんな意思決定設計が、開発でも重要です。選択肢を減らし、即断できる設計。それを僕は「意思決定をデザインする」と呼んでいます。
AIで無限に広がる選択肢、だからこそ意思決定が重要になる
AIの普及によって、私たちはかつてないほど多くの選択肢に触れるようになりました。ChatGPTなどによって得られるアイデアは豊富ですが、それを実行するかどうかを決めるのは人間です。
さらに、AIエージェントが仕様設計やコード生成まで行う時代にあっても、その判断と選択、つまり「どの道を進むか」は依然として人間に委ねられています。
不確実で不正確、かつ無限に広がる選択肢の中で、どのように意思決定の質を保ち、速さを担保するか。その設計こそが今の時代に求められているテーマです。
鍵になるのは、「ルールと前提」の設計です。300の選択肢から1つ選ぶのではなく、そもそも最初から1つに絞っておく。プロセスを標準化して、誰もが判断しやすい状態をつくる。券売機のように、選ぶプロセス自体を固定することが、開発においても重要だと考えています。
新規事業「PRESIDENT CARD」を3カ月で立ち上げた意思決定のリアル
2024年2月、UPSIDERは新たなブランド「PRESIDENT CARD」を立ち上げました。これは、経営者層に特化したハイステータスな法人カードで、従来のUPSIDERカードでは対応が難しかったニーズに応えるために開発されました。
開発チームはエンジニア7名、PdMやQAを含めて10人弱。わずか3カ月という短期間でのローンチを実現しました。
このプロジェクトで大切にした意思決定のポイントは以下の3つです。
- 頑張りすぎない:完全新規で作るのではなく、既存の機能を最大限活用。
- あってもいい機能は削る:「目玉機能」に集中し、それ以外は思い切って削る。
- 少人数で決める:ステークホルダーを増やさず、判断のスピードを担保する。
また、ブランドの世界観を守るために、既存プロダクト内の切り替えではなく、あえて別ブランドとして設計した点も意思決定の一つでした。
AIとの共創──チーム全体で使い、理解し、文化にする
PRESIDENT CARDの立ち上げでは、チーム全体でAIを活用する文化づくりにも力を入れました。PdMやQAもCursorやDevinを実際に使い、事業責任者もツールに触れて「自分で開発できるかも」と感じる体験を共有。
この“自分ごと化”が、チームの共通言語とリズムを生み出し、AI導入を成功に導く鍵になりました。
また、定量データを使った意思決定の可視化にも注力。エンジニアが成果を可視化し、ビジネス側も納得できるような体制を構築しました。
意思決定の未来に必要なのは「コンテキストの蓄積」
意思決定の制度とスピードを高めるためには、背景情報=コンテキストの蓄積が不可欠です。 SlackやNotion、Google Meetの文字起こしをサマリー化し、AIに読み込ませて意思決定に活かす。こうした仕組みづくりが、AI活用を「ツール利用」から「文化」へと昇華させます。
だからこそ、僕たちは「知恵はAIに、決定は人に」と考えています。選択肢を増やすのではなく、絞る。そして、絞れるように文脈をためていく。それが、これからの意思決定設計だと思っています。
おわりに
意思決定の本質は、無限の選択肢から選ぶことではなく、「迷わず選べるように整えること」。UPSIDERの開発チームはそのためのルール、前提、文化を自ら作り出し、AIと人の力を組み合わせながら、挑戦を続けています。
環境がめまぐるしく変わる時代において、迷わず進むための設計が重要です。選択肢を増やすのではなく、迷わず選べる状態をつくる。そのためのルールや文脈、共通言語を蓄積することが、AI時代における強い組織の鍵となります。
今後も、AI駆動の開発比率を高めつつ、複雑な意思決定をいかに設計していくかが、僕たちの課題です。リアルな業務コンテキストをため、それをチームで共有し、誰もが5秒で「味玉をつけるか」を決められるような状態をつくる。それが、僕たちの考える、AI時代の意思決定の理想形です。
今後もUPSIDERでは、AIを活用した開発や意思決定の最適化を進めていきます。
PRESIDENT CARDの今後のアップデート、そして私たちの次なる開発プロジェクトにも、どうぞご期待ください!
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