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「業務をAIに合わせて再設計する」という挑戦 ──AI経理立ち上げと、UPSIDER AI Coworking Platformの舞台裏

こんにちは、UPSIDERでエンジニアリングマネジャーをしているMiki( @m_miki0108 )です。

先日のプレスリリースをうけて、各新規事業の担当者が、その立ち上げの裏側を発信しています。

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今回の記事では、「UPSIDER AI経理」という新しい事業の立ち上げにおいて、私がプロダクト開発にどう関わったのかをお話しします。 と言っても、これは「完成されたプロダクトの裏話」ではありません。 どちらかというと、「プロダクトがない状態から、どうやって“かたち”をつくっていったか」「毎日変わる優先度や現場の要件にどう向き合ったか」──そんなプロセスの記録とこれからの挑戦への熱い想いを綴っています。

この記事が、その空気感を少しでも伝えられたらうれしいです。

UPSIDER AI経理とは…

AI技術を活用して、経理業務の代行、月次決算の自動締め、試算表や経営レポートの提供、さらにはAIエージェントによる経営サポートを行う業務支援サービスです。 ai-keiri.up-sider.com

プロダクトがなくても、サービスはすでに始まっていた

新規事業「UPSIDER AI経理」という名前もまだ決まっていなかった頃。

プロダクトは何も存在していませんでしたが、サービスはもう始まっていたのです。
Slackでは、すでに税理士とBPOのオペレーターチームがクライアント対応を始めていて。
Notionには、オペレーターのタスクと対応メモが毎日積み上がっていて。

エンジニアとして、税理士とBPOのオペレーターの業務を効率化・自動化せねばならない、というミッションでチームにJOINしたものの、私はまだ「経理業務」の実態を、深くは理解していませんでした。

そして、「何を作ればいいのか?」という問いすら曖昧な状態でした。

毎日忙しそうな税理士とオペレーターの様子を見ていて感じたのは、経理業務の仕事は単なる作業ではなく、判断の連続だったということです。

たとえば、

  • 「この取引先なら、たぶんこの勘定科目に落とす」

  • 「代表が関わっているから、税理士側でレビューしたい」

  • 「このケース、過去にも見たことがあるような気がする」

そんなふうに、明文化されていない“前提知識”や“勘どころ”が、業務のあちこちに埋まっていました。
このままの状態でAIを入れても、うまく機能しない。 むしろ、業務の構造そのものを変えていく必要がある。 そこから私たちの「UPSIDER AI Coworking Platform構想」は始まりました。

業務そのものを“AI時代に適した構造”へ、UPSIDER AI Coworking Platformという構想

──AI時代の“業務設計”を、ゼロから見直す。

繰り返しになりますが、業務は単なる作業の連なりではなく、ひとつひとつのプロセスにおいて「これまでどうやっているか」「どんな前提や経緯があるか」「それらを踏まえて今回何を基準に判断するか」といった点を検討しなければならなく、複雑になっていました。 それをそのままシステムに置き換えようとすると、どうしても属人性が抜けず、複雑さがそのまま残ってしまう。

では「業務を“AIが介入しやすいように”設計し直したら、どうなるだろう?」

そこから、VPoPである森が提案した構想が「UPSIDER AI Coworking Platform」でした。 この構想の本質は、業務そのものを“AI時代に適した構造”に変えていくという考え方です。

フロー全体はまず人の手で運用してみて、変えられる部分からシステムで自動化する 状況に応じた判断が必要な部分は、AIが補助できるようにコンテキストを分解・構造化しておく。

つまり、「全部自動化」ではなく、人×AI×システムの共存設計をあらかじめ組み込むこと。 これが、私たちがプロダクトの土台として位置づけた「UPSIDER AI Coworking Platform」です。

この構想は、「生産性を上げたい」とか「業務を効率化したい」といった単純な話ではありません。 むしろ、「業務そのものを、AIとシステム、そして人が協力しやすい形に作り変える」ための構造をゼロから考え直す── それがこの事業における最大の挑戦だと思っています。

現場を見て、プロダクトの輪郭を描く

プラットフォームの骨子となる構造は、VPoPの森(@diceK66)とエンジニアメンバーで一緒に並走して作っていました。 その中で、私の「最初にリリースすべきMVP(Minimum Viable Product)」を決める判断軸は、もう少し違うところにありました。

私がやったのは、毎朝オペレーターの朝会に参加すること。 オペレーター、スーパーバイザー、税理士、それぞれの視点から交わされるやり取り、Notionでのタスク管理画面での操作、それらの背景を観察していきました。
SlackのスレッドやNotionのログだけでは分からない、“業務の呼吸”のようなものに触れる時間でした。

  • どういう風に業務の進捗を見てる?

  • アサインのタイミングって、どう判断してる?

  • どこで判断が詰まって、誰にパスがいく?

その観察をもとに、最初のリリースでは「たくさんの機能がある」よりも、「確実に回る」ことを優先した設計を重視しました。

このMVPからUPSIDER AI Coworking Platformの最初の形が動き出しました。 まだまだ機能的に増やしたいものはたくさんあり、オペレーターから機能追加のリクエストもたくさんあります。 しかし、たとえ簡単に追加できる機能でも、安易には追加せず、そのリクエストの背景と、「どうすればUPSIDER AI Coworking Platformのコンセプトや世界観をオペレーターに浸透させられるか」を常に考えながら機能を考えています。

このやり方で数百倍のクライアントに対応できるのか?を問い続ける

MVPをリリースして、現場での業務がプロダクトの上で動き始めた一方、実はその裏で、業務の一部を“自動化”する開発も並行して進めていました。 最初の自動化は、正直、つぎはぎ感のあるものでした。

  • 「定期的に発生するタスクは、スケジュールに応じて自動で生成すれば、漏れがなくなるよね」

  • 「提出されたファイルをOCRで読んで、領収書っぽかったらファイル名に日付と金額を入れれば、開かなくても中身がわかって楽だよね」

どれも“ちょっと便利にする工夫”ではありましたが、抜本的な設計にはまだ届いていませんでした。
そんな中で、UPSIDER AI Coworking Platformという仕組みが少しずつ整っていくにつれ、私たちの自動化への組み込み方も変化していく必要がありました。 単なる「便利機能」ではなく、AIやロジックが“自然に介入できる構造”を業務の中にどう埋め込んでいくかという視点で設計を始めたのです。 それによって、必要になる設計も変わってきます。

  • タスクの定義と粒度

  • マニュアルとの対応関係

  • ステータスの分解と遷移ルール

このフェーズで私が感じていたのは、自動化とは「手間を減らすための機能開発」ではなく、“人とAIが共存できる業務構造を設計する”ことそのものだということです。

そして、業務を設計することが、そのままAIを組み込む布石になる──そんな感覚が日に日に強くなっていきました。

その中で頼りにしていたのは、数値ももちろん大切ですが、それよりもオペレーターを見ている中でふと出てくる違和感や小さなひっかかりでした。

「この業務、なんで特定の人を毎回メンションしているんだろう?」 「この質問は前も見たような気がする」 「このタスク、誰でもできそうなのに特定の人が実施する運用になっていない?」

そして、私はいつもこの問いに立ち返っています。

「そのやり方で、今のクライアント数の数百倍を対応することはできるのか?」

この問いに“イエス”と答えるために、私たちは今日も業務と構造とプロダクトのあいだを往復しながら、一歩ずつかたちにしていきます。

構造を変えれば、成果が動き出す──AI経理の現在地

「UPSIDER AI経理」を含む〈UPSIDER AIシリーズ〉は、すでにβ版として350社以上*1に導入されており、月次決算の自動化によって、大幅な業務削減と経営判断の迅速化を実現しています。

実際に、1社あたり月間約250件の仕訳・請求・支払いといった経理処理を実行しており、とくにシリーズB〜C相当(従業員数数十〜百名規模)の企業では、月間100〜500件の経理処理の大半を任せられる水準にまで進化しています。 未完成のプロダクトを、「業務構造そのものを変える」アプローチで育ててきたこの挑戦は、すでに多くの実業務の現場で成果を上げ始めています。

最後に:この未完成を、おもしろがってくれる人へ

今、UPSIDER AI経理はまだまだびっくりするほど未完成です。 業務も、プロダクトも、チームの体制も、これから育っていくフェーズです。

もしあなたが、

  • 技術で事業を前に進めたいという衝動があって

  • AIと人の協働にワクワクできて

  • 名前すらついていない課題に挑みたくて仕方ないなら

きっとこの挑戦をおもしろがってもらえると思います。

この物語の続きを、一緒に紡いでくれる仲間を、心から待っています!

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*1:* UPSIDER AIシリーズ(旧名称:UPSIDER Coworker)の契約社数合計。2025年6月時点。