【日経×TOKIUM×UPSIDER】課金・決済・経理DXの最前線から見えたもの

こんにちは!UPSIDERの技術広報のAyaです。
2026年3月、日本経済新聞社 CDIO室が主催する「NIKKEI Tech Talk」が開催され、UPSIDER、TOKIUM社、日本経済新聞社の3社が登壇しました。
イベントでは、AI活用事例にとどまらず、AIによって「開発」や「意思決定」がどのように変わり始めているのかについて、各社の実践をもとに議論が交わされました。
登壇者は以下の3名です。
- 山口 拓也 氏(株式会社日本経済新聞社)
- 森 大祐(株式会社UPSIDER VP of Product / AI事業責任者)
- 西平 基志 氏(株式会社TOKIUM)
課金・決済・経理という、正確性と信頼性が強く求められる領域において、AIはどこまで入り込み、何を変えようとしているのか?現場で実際に起きている変化について、簡単にレポートしてまとめます!
イベントページはこちら https://nikkei.connpass.com/event/382430/
Escape from Excel方眼紙 〜マークダウンで繋ぐ、人とAIの架け橋〜
山口 拓也(日本経済新聞社)
日本経済新聞社 課金決済プラットフォームの開発チームに所属する山口さんのセッションでは、長年利用されてきたExcel設計書をMarkdownへと変換する取り組みが紹介されました。単なるフォーマットの置き換えではなく、AI時代における開発プロセスの再設計に踏み込んだ内容です。
背景にあったのは、「AIが扱えない」という課題です。

Excelは人間にとっては柔軟で扱いやすい一方、構造が曖昧になりやすく、AIにとっては文脈の解釈が難しいという特性があります。その結果、コード生成などAI活用が進む中で、ドキュメントだけが人手に依存し続ける状態が生まれていたそうです。
山口さんのセッションでは、この課題に対し、PDF変換・テキスト抽出・AIによるMarkdown化・検証といったプロセスを組み合わせることで、AIが扱える形式への変換を実現した事例が紹介されました。
この取り組みの本質は単なる”変換” ではなく、コードで表現可能な情報はコードに委ね、ドキュメントとして保持すべき情報を見直すという発想の転換にあります。
AI時代においては、すべてを記録することが最適解とは限りません。むしろ、「何を残すか」ではなく「何を残さないか」を設計することが重要になります。
ドキュメントのあり方そのものが、AIを前提に再定義され始めているのだな、と感じるセッションでした。
UPSIDER AI Coworking Platformが実現する、AIの指示で人とエージェントが協業するAI BPOの働き方
森 大祐(株式会社UPSIDER)
UPSIDERからは、森が「UPSIDER AI経理」というBPOサービスの裏側にある設計思想について語りました!
森のセッションでは、「UPSIDER AI経理」の設計において特徴的な、「業務をそのまま自動化するのではなく、プロセスを細かく分解し、人とAIが協業する」という前提について説明しました。すべてを一度に自動化するのではなく、処理を小さな単位に分け、それぞれを人とAIでバトンパスしていく構造を採用しています。

さらに重要な設計として紹介されたのが、「三権分立」と呼ばれるアプローチです。具体的には、期待を定義する役割、指示を出す役割、成果を評価する役割を分離し、それぞれを独立して設計しています。森は、「この分離によって、評価の客観性と品質を担保できる」と説明しました。
森の話を聞いていて改めて感じたのは、この取り組みが単なるAI活用という枠組みを超え、私たちが日頃行っている意思決定の構造そのものを分解し、再設計する試みだということです。
また、印象的だったのは、現場におけるAIの位置づけの変化です。AIを従来のように便利なツールとして扱うのではなく、あたかも「信頼できるチームメンバーに仕事を任せる」かのような感覚で向き合う。そんな新しい仕事の仕方が、すでに当たり前のものになりつつあります。
もはやAIは、後ろから支えるだけの補助的な存在ではありません。意思を持って共にプロジェクトを動かす「主体」として、文字通り肩を並べて働く…。そんな、これからのUPSIDERらしい働き方のスタンダードを再確認させてくれるセッションでした!
資料はこちら speakerdeck.com
SaaSの操作主体は人間からAIへ 〜経理AIエージェントが目指す深い自動化〜
西平 基志(株式会社TOKIUM)
TOKIUM 西平さんからは、AI時代におけるSaaSの変化について、より踏み込んだ視点が提示されました。
これまでのSaaSは「人が操作する前提」で設計されてきましたが、AIエージェントの登場により、システムを操作する主体そのものが変わりつつあります。人が操作するのではなく、AIが判断し、実行する世界への移行が始まっている、と説明されました。

ただし、その実現には大きな課題があります。それが「コンテキスト=文脈」です。
AIの性能自体はすでに十分高い水準にある一方で、実際の業務に適用する際には、必要な文脈情報を適切に取得できないことが障壁となっています。コンテキストは組織内に分散しており、担当者ごとに異なる形で存在し、さらに多くが暗黙知として蓄積されているという特徴があります。
西さんは、こうした「分散」「個別性」「暗黙知」という構造的な課題が、AI活用を難しくしていると指摘しました。
この課題に対し、TOKIUM社では開発者自身が実際の業務を体験し、コンテキストを直接理解する取り組みを進めているそうです。開発者が単に機能を実装するだけでなく、業務の文脈を捉え、その抽出と構造化の最前線に立つことが求められていると説明されました。
AI時代の開発においては、技術そのものだけでなく、コンテキストをいかに扱うかが重要なテーマとなっているということが印象的なセッションでした。
議論の核心:AIは「意思決定」を変え始めている
続くパネルディスカッションでは、各セッションのテーマを横断した深い議論が交わされました。その中で共通していたのは、「AIによって意思決定のあり方が大きく変化している」という点です。
まず直面しているのは、意思決定の「量」の劇的な増加です。AIによってアウトプットのスピードが上がり、検討可能な選択肢が広がったことで、判断すべき回数そのものが増えている状況が共有されました。
一方で、質の面でもポジティブな変化が見られます。情報収集や分析が高速化されたことで、これまで以上に深い検討が可能になり、精度の高い意思決定が可能になっているという認識が示されました。
しかし、その変化は新たな課題も生んでいます。アウトプットの増加に対して、レビューや承認といった人間側のプロセスが追いつかず、ボトルネックになり始めているという指摘です。
AIが開発や業務を加速させるほど、最終的な判断を担う人間側の負荷は増大します。この構造的な変化が、各社に共通する切実な課題として浮かび上がっていました。
こうした議論から見えてきたのは、AI導入が単なる「効率化」の手段にとどまらないということです。組織のかたちや意思決定プロセスそのものを見直し、アップデートしていくための重要な契機になっている…そんな確信を抱く締めくくりとなりました。

まとめ
今回のセッションを通じて明らかになったのは、AIが開発の一部を便利にするツールではなく、開発と意思決定の前提そのものを変え始めているということです。
特に重要な変化として、次の5つの点が挙げられます。
- ドキュメントや設計はAIを前提として再構築されつつある
- AIと人は明確に役割分担するのではなく、協業する関係へと移行している
- コンテキストの整理と設計が開発の中心的なテーマになっている
- 意思決定は量・質の両面で変化している
- 人間の役割は実装から、意図の設計と責任の担保へとシフトしている
AIは単に開発を効率化する存在ではありません。これまで暗黙的に扱われてきた構造や判断基準を可視化し、再定義を迫る存在でもあります。
この大きな変化をどう乗りこなし、自らの力に変えていくか。それが、これからのプロダクト開発における重要な分岐点になると言えます。
おわりに
今回のセッションでは、AI活用の成功事例だけでなく、現場での葛藤や課題も率直に共有されていました。
AIは決して万能ではありません。しかし、確実に開発と意思決定のあり方を、確実に、そして不可逆的に変え始めています。
UPSIDERでは、この変化の最前線で、AIとプロダクトの可能性に向き合い続けています。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひカジュアルにお話ししましょう!
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