UPSIDER Tech Blog

「PRESIDENT CARD」開発舞台裏:― 3ヶ月で新ブランドを立ち上げる方法とは ―

はじめに

こんにちは、新規事業の開発責任者を務めている早坂 涼です。
2025年2月にローンチした新ブランドの法人カード「PRESIDENT CARD」。

UPSIDERのDNAを活かしつつ、まったく新しい価値をどう作るか。

私たちは“超短期リリース”という制約のなかで、実験的なアーキテクチャ設計や新技術の適用に挑みました。本記事では、その舞台裏をお伝えします。

スピード×品質を両立するための開発体制

  • 開発期間:3ヶ月
  • チーム編成:10名強(BizDev・PdM・Tech Lead・Mobile・Backend・Frontend・QA・Design)
  • プロジェクトのQCDS優先度
    • 「Delivery >= Quality >> Scope >> Cost」
    • つまり「目玉となる機能は作りつつ適度にスコープは小さく、デリバリーと品質を優先する!」

3ヶ月で爆速リリースするために、「既存のUPSIDERカードとは違うブランドの世界観をいかに最短距離で構築するか?」という視点で、大胆な設計判断と開発フローの最適化を進めたのが、今回のプロダクト開発の特徴になります。

PRESIDENT CARDの独自機能:新たなUXへの挑戦

1. ポイント交換機能 UPSIDERカードではポイントを自動的に請求金額から差し引く設計ですが、PRESIDENT CARDではユーザー自身がマイルやギフトに自由に交換できる仕組みを実装しました。

2.メタルカードの発行 重厚感あるオーナー限定メタルカードも新登場。ステータス性を重視するユーザーの声から生まれたこのカードは、プロダクトの象徴ともいえる存在になっています。

3.マイナンバーカードを活用した本人確認(JPKIの導入) 従来のアカウント開設では、身分証をアップロードして確認を行う必要がありましたが、不鮮明な画像による差し戻しなど、手間のかかるプロセスが課題でした。

PRESIDENT CARDではマイナンバーカードを活用したJPKIにより、正確かつスムーズに本人確認を完了できるように。セキュリティとUXの両面で大きく改善を実現し、将来的な法令準拠の面でもメリットがありました。

また、アカウント開設までのリードタイムも劇的に短縮されました。

新ブランドを速攻で立ち上げるアーキテクチャ戦略

「どうやってUPSIDERの既存基盤を活かしながら、全く新しい世界観を提供するのか?」 それは、Org/Brand設計とDI(依存性注入)の活用が鍵になります。

1. Org/Brand設計

私たちのシステム上のドメインに、ブランドという概念が“爆誕”しました。ブランドはプロダクトの世界観を司る重要な要素です。

  • 1つの組織(Org)が1つのブランド(Brand)を持つというシンプルなルールを採用(別のブランドとなる場合はシステム上、別の組織扱い)。
  • ビジネス要件とシステム要件を整合させたうえで、組織のブランド判別を自然に行えるドメインモデルを作成。

2. DI (Dependency Injection) でブランド別の振る舞いを実現

  • フロントエンドのブランドごとのドメイン差し替えから、バックエンドの設定値切り替えまで、DIを用いて動的にアプリケーションをビルドできるように設計。
    • 例:BrandConfigを注入することで、ブランド固有のUI要素や文言をスイッチ。
  • 共通コードはそのまま、ブランド独自機能だけを差し替える」柔軟な拡張が可能に。

3. メール送信処理をより安全に

「誤ブランドでメールを送ってしまう」というインシデントは、ユーザーの信頼を一気に損ないます。そうならないよう、以下のような工夫を凝らしています。

  • 新しいメール種別が増えたときも、Orgに紐づいたBrandを自動判定し、そのブランドに合わせてメールのテンプレートや送信元を判断する安全装置を実装。
  • ブランドごとにお客様へ伝えたい温度感や、おもてなし感などを演出するため、テンプレートは共通化せずにそれぞれのブランドが持てるように設計。

未来志向の基盤づくり

PRESIDENT CARDリリース後も、私たちはブランド横断で利用できる共通機能の分離を進め、将来的に技術的資産になるような投資を積極的に行っています。

小さく最短で始めて、早めに壊して、より良く作り直す」ことを常に意識し、今動いているから良しとせず、お客様・事業・チームのエンジニアがもっと快適に使えるアセットを開発し続ける方針です。

  • 今回の目玉機能であるポイント交換機能やJPKIは、別のブランドでも再利用可能な新しいサービスとしてデプロイ。
  • 請求・回収の領域を専門的に扱う「HERMES請求基盤」を開発中。
  • 従来モノリシックなAPIに組み込まれていた処理をマイクロサービス的に切り出し、あらゆるブランドから再利用しやすい形に再構築しています。

おわりに

PRESIDENT CARDは、UPSIDERにとって初の本格的な新ブランドです。3ヶ月というタイトなスケジュール下で、新しいテクノロジーとデザイン、そしてビジネス戦略を融合させながら生まれたプロダクトでもあります。
このプロジェクトで得た知見やノウハウは、今後の新ブランド展開やサービス進化の土台になるはずです。

実は、AIを活用した次世代の開発体制も水面下で進行中ですが……それはまた、別のブログで!
ここまで読んでいただきありがとうございます。少しでも開発チームの熱量や、技術的チャレンジが伝われば嬉しいです。

PRESIDENT CARDの今後のアップデート、そして私たちの次なる開発プロジェクトにも、どうぞご期待ください!

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