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守る「だけ」の優しいEMを抜けて、事業とチームを両方見る視点を身につけた話 ── EMConf JP 2026 登壇レポート

こんにちは。UPSIDERでエンジニアリングマネージャーをしているmitsuiです。

2026年3月4日(水)に TOC有明 で開催された EMConf JP 2026 にて登壇しました。EMConf JP は「増幅」と「触媒」をテーマに、EMの実践知を共有し合うカンファレンスです。

2026.emconf.jp

本記事では、そのときお話しした内容を補足も交えながらお伝えします。

発表の背景

発表のテーマは「事業推進とチーム健全性の両立」です。EMとして「チームを守る」ことに注力していた自分が、事業フェーズの変化に直面し、意思決定のスタイルを変えざるを得なかった経験と、そこから得た判断軸についてお話ししました。

同じように「チームを守りたいけれど、事業の速度も求められている」と感じているEMの方に届けばと思っています。

盾の時代──チームを守ることに徹した日々

2024年3月にUPSIDERへ入社した直後、チーム内で退職・異動が重なり、4人体制での立て直しを余儀なくされました。複雑なドメイン知識やソースコード、組織コンテキストの断絶が一気に課題として噴出した状態です。

このとき取った戦略は「盾」になること、つまりチームを外部の依頼から守り、集中できる環境を作ることでした。具体的には以下を実行しました。

  • 外部からの依頼を極力削減し、チームのキャパシティを守る
  • WIP(Work In Progress)を極限まで減らし、1つずつ確実に完了させる
  • 対話とモブプログラミングを通じて知識を共有し、属人化を防ぐ

半年後にはチームが4名から8名に回復し、デリバリーも安定しました。この時期は「盾」の戦略がうまくはまった期間でした。

槍の時代──事業を前に進めるために変えたこと

2025年9月、新規プロジェクトが始動します。3ヶ月ごとに成果を証明しなければならない過酷なロードマップで、急造の体制のなか自分が先行して動き、後からメンバーを配置する形を取りました。

正直なところ、これは自分のEMとしての信条と衝突しました。サーバントリーダーシップ、心理的安全性の確保、権限委譲と自律性──大切にしてきた価値観とは異なる動き方を求められたからです。しかし「支援」が「停滞」に変わりかけていることにも気づいていました。

そこで、以下のように意思決定のスタイルを切り替えました。

変えたこと

  • 合意形成を重視するスタイルから「80点なら即断」へシフト
  • タスクの優先度決定や外部調整を自分が一手に引き受ける
  • 設計の初動を自分で引き取り、方向性を示す

変えなかったこと

  • スプリント・デイリーなどのチームのリズムは維持
  • 1on1や対話の場は守り続ける
  • 重要機能の実装はメンバーに委譲

この「槍」のスタイルで得たものは大きく、事業成果やステークホルダーからの信頼獲得、非常時の突破力につながりました。一方で、意思決定プロセスの不透明化、メンバーの納得感の欠如、自律性や学習機会の損失といったしわ寄せも生まれました。

事業推進とチーム健全性は本当にトレードオフか?

ここで直面したのが、「事業を推進すること」と「チームの健全性を保つこと」は本当に両立できないのか、どうバランスを取るべきなのかという問いです。 事業の推進は必要だ、でも明らかに不健全な箇所がある。その不健全な箇所を改善するところにどれくらいのコストをかけていいの?全体の5%? 10%?とそこに対する意思決定に対して「どれくらいのバランスを取ればいいのか」というのがうまく言語化できない状態でした

そんな中VPoEから「その意思決定が、企業価値にどう影響するかで考えればいい」とアドバイスをいただき、DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)の構造を応用して判断軸を整理しました。

組織の不安定さをrとして表し、かつ事業貢献であるCFの増加をただやるだけでは企業価値が上がらないということを表現できたことが自分にとってとてもしっくりきたところでした。 事業貢献としてCFを上げるよりも、チームの改善や、技術的負債の解消によって r を下げることによって企業価値が高くなるのであればその意思決定に価値がある、そう自信を持って判断することができるようになりました。

これにより、「何を判断するか(WHAT)」と「どう実行するか(HOW)」を分けて考えられるようになりました。

判断(WHAT) 実行(HOW)
CF(事業成果)を上げる 先頭に立つ(槍)
組織リスクを低減する 支える(サーバント)/任せる

EMとして持っておきたい3つの意識

発表のまとめとして、自分がこの経験から得た3つの意識を共有しました。

  1. 手広さの必要性:事業貢献「だけ」でなく、組織マネジメント「だけ」でもなく、両方を見る視点が必要
  2. 目線合わせ:何に注力するかについてステークホルダーと期待値を揃えることが信頼構築に不可欠
  3. 自分の軸を持つ:「どんなEMでありたいか」を明確にすること。自分の場合はピープルマネジメントが好きという軸がありつつも、必要に応じて他のロールも担う柔軟性を持つようにしています

EMとは、不定形な課題に対して自らの意志で形を与える役割だと思っています。「何を軸に、どう貢献し、どんなEMでありたいか」──この問いに向き合い続けることが大切だと改めて感じています。

発表資料

当日の発表資料はこちらです。

speakerdeck.com

おわりに

EMConf JP 2026 では、自分の発表だけでなく他のセッションや懇親会を通じて多くの刺激を受けました。EMとしての悩みや葛藤を共有できる場があることのありがたさを改めて感じています。

今回お話しした「盾と槍」の話は、自分自身まだ試行錯誤の途中です。同じように悩んでいるEMの方がいれば、ぜひ話しましょう。

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