
こんにちは!法人カード「UPSIDER」(以下、UPSIDERカード)開発チームでPdMをしているShoheiです。これは、UPSIDER Tech アドベントカレンダー 2025の16日目の記事です。
UPSIDERのアドベントカレンダー2025 では、Tech・Corporate・Bizの3つに分かれて、それぞれのチームメンバーが日替わりでさまざまな内容をお届けします。
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UPSIDER Tech Advent Calendar 2025 - Adventar
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今回は、UPSIDERカードチームのPdMとして過ごした4ヶ月間で、私が陥った「ビルドトラップ」という失敗と、そこから脱出するための現在進行形の挑戦について綴ります。
カードチームは、複雑な金融ドメインと向き合いながら「UPSIDERカード」のWeb管理画面を開発しています。
この「複雑なドメイン」をチームがいかに乗りこなしているかについては、同チームのShunsukeが書いた「不確実性の中でUPSIDERカードチームが「悩みながら選び続ける」4つのトレードオフ」や「複雑なドメインに挑むチームのタスク分解実践記」、QAとして帯同しているTeraの「スクラム開発を成功に導くQAの上流からの関わり方」もぜひ併せてご覧ください。
PdMとしてのキャリアは浅くまだまだ手探り状態ですが、この記事が同じように「解決策」に恋をしてしまい、ビルドトラップに足を踏み入れているPdM、PO、そしてエンジニアの方の一助となれば嬉しいです。
はじめに
私は今年の8月にUPSIDERに入社するとともに、エンジニアからPdMへキャリアチェンジをしました。前職ではBtoB SaaSプロダクトのエンジニアとして、フロントエンドとバックエンドの開発を行っていました。
今年の流行語大賞のトップテンには「古古古米」が入りましたが、私はエンジニア畑で育ち、8月にPdMとして精米されたばかりの「新米」です。 とはいっても、「新米 = ツヤツヤ」とはほど遠く、現実はPdMとしての思考に磨きをかけている真っ只中で、まだまだ米ぬかにまみれながら業務をしています。なんなら、ぬか床から出したばかりのきゅうりの方がまだ綺麗なんじゃないかというくらい、米ぬかにまみれています。
ちなみに、ぬか床といえば無印良品の「発酵ぬかどこ」が安くて手軽で、味も美味しくてイチオシです。定番ですが、きゅうりと人参を漬けておけば、ご飯のお供にも晩酌のおつまみにもなる最強の相棒が完成します。
ただ、パッケージに書いてある「毎日のかき混ぜがいらない」という言葉を鵜呑みにして放置しすぎるとカビが生えてくるので、適度なお手入れが必要な点だけはご注意ください。

話が逸れました。本題に戻ります。
入社直後、私はこう思っていました。「エンジニアの経験があるから、UPSIDERの開発プロセスのキャッチアップも早く行うことができ、PdM業務の助けになるだろう」と。確かにその側面はあり、何度も助けられました。しかしその慢心があったことで、入社早々に大きな落とし穴にハマってしまったことも事実です。
以下では、新米PdMが陥った失敗と、そこから抜け出すために最初の一歩を踏み出した話を書きたいと思います。
日々の開発に向き合う中で、徐々に「目的」が霞んでいった
前述の通り、UPSIDERカードチームはWeb管理画面の開発を担当しています。 その領域は、与信・決済・請求・仕訳といった「お金」に関わる機能と、カード発行やユーザー管理といった「管理」に関わる機能が密接に絡み合う、非常に複合的なものです。 関わるドメインが広くかつステークホルダーも多いため、多岐にわたる機能要望が飛び交う環境であることはご想像いただけるかと思います。
カードチームでは期初にロードマップの大筋を決め、スプリントごとに優先度を調整しながら開発を行っています。 私が入社した8月時点では直近のロードマップが決まっていたこともあり、私は計画に沿ってプロダクトバックログアイテム(以下、PBI)の要件を詰め、スプリントに乗せていくことに集中していました。
仕様の抜け漏れや技術的な課題があっても、チームのエンジニアたちが自律的にフォローし、スピーディーに実装を進めてくれました。おかげでロードマップで計画されていた機能は順調にリリースされ、目の前の課題も解消されていきました。一見すると順調に進んでいるように思えましたが、3ヶ月ほど経ったあるとき強烈な違和感に襲われたのです。
「すごいスピードでデリバリーされているけれど、これらは今、本当に解くべき課題だったのだろうか...?」
チームが高いパフォーマンスを発揮すればするほど、その「向かっている先(Why)」に対する私の解像度の低さが、浮き彫りになってきたのです。
気づけば「ビルドトラップ」に片足を突っ込んでいた
UPSIDERでは、「金融サービスとして極めて高い信頼性・安定性を守ること」と、「スタートアップとして新しい価値を圧倒的なスピードで届けること」を両立していくことが大切です。
この高い水準に対して、PdMとして「早く成果を出して貢献したい」と前のめりになるあまり、本来立ち止まって行うべき「課題の構造化(Why)」をおろそかにし、目に見えるアウトプットとして分かりやすい「解決策(How)」に逃げてしまっていたのです。
「なぜこれをやる必要があるのか」というWhyの深掘りと、「今、何に価値があるのか」という共通言語を築く営みが抜け落ちていたために、判断の拠り所が曖昧になった私は「提供する価値に対する確信」が持てず、不安を埋めるように次々と「解決策」をチームに依頼する状態に陥っていたのです。 これでは、チームをただの「機能を作る工場(Feature Factory)」にしてしまいかねません。

プロダクトマネジメントの知見をインプットする中で出会った書籍、「プロダクトマネジメント 〜ビルドトラップを避け、顧客に価値を届ける〜」では上記の状態を「ビルドトラップ」と定義しています。
ビルドトラップとは:
- 組織がアウトカムではなく、アウトプットで成功を計測しようとして行き詰まっている状況
- 実際に生み出された価値ではなく、機能の開発とリリースに集中してしまっている状況
これを読んだ時、Amazon EC2インスタンスを停止しようとして、「終了」を押してしまった時のような衝撃が全身を駆け巡りました。私は「問題」を愛する前に「解決策」に恋をしていたと気づかされたからです。
まさしく、私はビルドトラップに片足を突っ込みつつありました。チームの活動を価値につなぐために不可欠な、「解決策」ではなく「問題」を愛する姿勢が抜け落ちていたのです。

脱出への第一歩
書籍や訳者である吉羽氏のスライド「プロダクトマネジメントの”罠”を回避しよう」ではビルドトラップへの対処方法として以下の7つが挙げられています。
- 適切なプロダクトマネージャーを据える
- 適切なチーム構成にする
- 適切な戦略を組織へ行き渡らせる
- ソリューションの前に問題を理解する
- ソリューションを探索する
- 適切な指標を定めて活用する
- 組織をプロダクト主導にする
その中から、私がまず最初に取り組むべきだと考えた2つのアクションを紹介します。
1. 「Why」に責任を持つPdMになる(適切なプロダクトマネージャーを据える)
上記の対処方法には「適切なプロダクトマネージャーを据える」とありますが、これは私自身がその役割を全うできるように変わるという宣言です。
プロダクトマネージャーは「Why(なぜ)」に責任を持つ。「なぜ」から始める
これまでの私は、会社や事業のビジョン、マーケットへの深い理解に基づいた「Whyの深掘り」を疎かにしたまま、機能要件(What)をPBIに書いていました。
ここから脱却するため、PBIの作成プロセスを見直していきます。具体的には、PdMが一方的に仕様を決めるのではなく、PdMは「Goal」「Why」「User Value(ユーザーが得られる価値)」の定義に全力を注ぎ、「What(何を作るか)」「How(どう作るか)」はリファインメントの場でエンジニアと共に議論して決める。こうした、UPSIDERカードチームとして理想とするスクラムの形への移行を進めています。 チーム全体で「Why」を議論する回数を増やすことで、高い納得感を持って課題に向き合える状態を目指しています。
2. リリース後の検証を徹底する(適切な指標を定めて活用する)
「リリースして終わり」ではなく、「リリース後に対象としていた課題が解消されたのか」という検証がなされなければ、その機能が最適だったのかをチームが学習できません。Whyを深掘りし、本質的に解消したい課題が特定されれば、自ずと見るべき指標も定まってくるはずです。
幸いなことに、この3ヶ月でSQLの理解が大きく進んだため、エンジニア陣のフォローも仰ぎながら、「作った機能が使われているか」だけでなく「ユーザーの課題が解決したか」を計測するフローを確立していきます。
まとめ
新米PdMが陥った「ビルドトラップ」について紹介しました。
UPSIDERカードのような複雑なドメインで、解くべき課題が山積みな環境ほど、目に見える「解決策(How)」に手を伸ばして安心するのは簡単です。だからこそ、あえて立ち止まり、本質的な「課題(Why)」と向き合い続ける覚悟が必要なのだと痛感しました。
PdMとして「問う」ことから逃げないこと。 私自身、まだまだ学びの途中ではありますが、ユーザーの課題に心から向き合い、チームの「作る力」を最大限の価値に変えられる存在になれるよう、日々精進していきます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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