こんにちは!不正利用対策チームのShoです。
3Dセキュア(3DS)導入の義務化、サイン決済の廃止が行われ、不正利用対策の重要性がますます高まっています。
UPSIDERでも2024年11月に不正利用対策チームを立ち上げ、より高精度な不正検知を目指した取り組みを開始しました。以下のブログでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
そしてこの度、不正利用対策チームは新しく不正利用検知システムをリリースいたしました。
なぜ新しい不正利用検知システムを作ったのか
不正利用対策とUXのトレードオフ
不正利用を防ぐ仕組みは、プロダクトの安全性を確保する上で不可欠ですが、行き過ぎた対策はユーザー体験(UX)の悪化につながります。そのため、セキュリティと利便性のバランスを考慮することが重要です。
既存のシステムでは不十分だった理由
UPSIDERではこれまで、Visaが提供する「VRM(Visa Risk Manager)」という不正検知ツールを活用してきました。VRMはとても強力なツールですが、以下のような課題がありました。
- VRMは外部サービスのため、UPSIDERの社内データを直接活用できない
- 法人カードの利用傾向は企業や業種によって大きく異なるため、個別最適なルール設定が困難
例えば、100万円という決済金額がその企業にとって大きいか、小さいかはUPSIDERの社内データを活用しないと判断できません。 また、海外で決済が発生した際にも、海外で業務を行っている企業と、国内のみで決済をしている企業ではリスクの大きさが異なります。
このような背景から、社内データを活用し、企業ごとに柔軟な検知ルールを適用できるシステムの必要性が高まりました。
既存のシステムの構成
- VRMだけではUPSIDERの社内データを不正利用検知に活用することができなかった
新システムの構成
- 新しい不正利用検知システムでは、UPSIDERの社内データを活用した検知を行う
- VRMと併用することで、より精度の高い検知が可能になった
新不正利用検知システムのアーキテクチャ
新システムはUPSIDERのネットワーク内に構築されており、さまざまな社内データを取り込み、柔軟にルールを適用できます。主な構成要素は以下の通りです。
Rule Evaluator
不正利用をリアルタイムに判定するルール評価エンジン。複数のルールを実行し、疑わしいトランザクションを即時に検出します。
アーキテクチャの特徴
- データベースには Firestore を採用しており、ルール定義の柔軟性とスケーラビリティを両立。
- 決済基盤に求められる厳格なレスポンスタイム要件を満たすため、リアルタイムである必要がないDB書き込み処理等を非同期で実装。
- 不正利用検知後の非同期アクションは、後続の Async Action Executer を利用。
Data Collector
社内のさまざまなデータソースからデータを収集・整形し、Rule Evaluatorに提供します。
データ収集とセキュリティ
- 機密性の高い情報を扱う際には、元データが特定されないよう適切に加工・変換し、安全性を確保しつつルール評価の精度を維持。
- 多様なデータソースに対応するために、高い拡張性を備えており、新たなソースの追加や変更にも容易に対応可能。
Async Action Executor
Rule Evaluatorの検知結果に応じて非同期にアクションを実行します。
非同期処理と拡張性
- Pub/Sub を用いた疎結合・冪等性のある設計により、信頼性の高い非同期処理を実現。
- Rule Evaluator以外のシステムからも利用可能な共通基盤として設計されており、拡張性に優れた構成。
- アクションは自由に追加・変更が可能で、将来的な機能拡張にも対応。
この3つのアプリケーションを連携することで、UPSIDERならではのデータを活かした、高精度かつ柔軟な不正検知フローを実現しています。
全体システムの設計と運用
すべてのアプリケーションは Kubernetes 上にデプロイされており、高可用性・スケーラビリティ・継続運用性に優れた構成となっています。さらに、分散トレーシングにはCloud Trace を導入しており、各コンポーネントの動作や処理フローを可視化することで、迅速なトラブルシュートや性能監視を可能にしています。また、GKE における認証にはWorkload Identity Federation for GKEを利用し、安全なアクセス制御を実現しています。
今後の展望
新不正検知システムは既存のVRMと併用することで、相互に補完しあいながら、より多面的で強力な不正検知を実現しています。
今後は、
- 独自ルールを検証できるシミュレーターの開発
- 不正利用検知AIモデルの強化
に取り組み、検知精度の改善によるUXの向上を目指していく予定です。
UPSIDERは、セキュリティとUXのどちらも妥協しない、不正利用対策をこれからも追求していきます。
最後に
私たちの目指す理想の状態には、まだまだ道のりがあります。不正利用検知システム以外にも開発や改善したいことがたくさんあります。そんなUPSIDERの挑戦に興味を持っていただけた方は、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう!
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